哲学が導く「希望の地平」とはーー 人間とテクノロジー考える 東大とシンポジウム共催
京都哲学研究所は2月2日、東京大学の東洋文化研究所P4NEXT、文学部・大学院人文社会系研究科とともにシンポジウム「Philosophy and Technology on the Horizon of Hope」(希望の地平に立つ哲学とテクノロジー)を開催しました。哲学はA Iを含む先端技術をどのように理解し、先端技術はどのような哲学を必要としているのか――。国内外の識者らが多角的な観点で意見をかわし、会場となった東京大学本郷キャンパスの教室では約50人が熱心に耳を傾けました。
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今回のシンポジウムは、昨年9月の第1回京都会議―「価値多層社会」の実現に向けて―で展開された豊かな議論を引き継ぎ、アジアやアフリカの視点を意識しながら考えを深めていく目的で開催されました。
京都会議でも登壇した東京大学の中島隆博教授と納富信留教授、当研究所の共同代表理事を務める京都大学の出口康夫教授が、それぞれ主催者を代表してあいさつ。その後、エラスムス・ロッテルダム大学(オランダ)のユク・ホイ教授が講演し、急速に発達するAIと人間との関係性について語りました。ホイ教授は「人間の自由は機械から逃げることや機械を破壊することによって実現されるのではありません。機械に『適切な場所』を与えることによって実現されるのです」と強調。自身が説く「適切な場所」とは「自動化を再評価し、その限界を認識すること」であるとし、AI時代において人間はテクノロジーとの「新たな関係を探求」すべきだと述べました。
アフリカの視点で講演を行ったのは、ゲスト登壇したユトレヒト大学(オランダ)のワカニ・ホフマン研究所部門長です。ケニア出身のホフマン部門長はアフリカの「ウブントゥ」という思想をAIシステムに注入する研究を行っており、京都会議でもパネルディスカッションに登壇しました。この日の講演では「アフリカでは『新たなデータ植民地主義の時代に入ったのではないか』という大きな不安を抱いています」「主にアメリカで開発され、ヨーロッパの言語でもアフリカの言語でもない言語で語られるAI技術に、人類の未来は支配されてしまうのではないか――。この恐れは日本でも議論されていることでしょう」と述べる一方、悲観論に陥ることはないと指摘。人類の希望は「それぞれの文化の価値の中にある」と語り、「あなたがいるから、私がいる」という考え方に根ざしたウブントゥ思想について紹介しました。
シンポジウムではこのほか、延世大学(韓国)のキム・ハン教授、立教大学の河野哲也教授、京都大学の稲谷龍彦教授、分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」の開発で知られるオリィ研究所の吉藤オリィ所長と永廣柾人さん、経団連総合政策研究所の吉村隆事務局長が講演しました。全身の筋力が徐々に低下していく難病の脊髄性筋萎縮症(SMA)を患う永廣さんはOriHimeを通じて登壇し、「寝たきりになるのが人生の終わりではありません。行きたいところに行って、会いたい人に会い、未来を作ることは、現在でも可能なんです。私は、体を動かせるかどうかだけで人生が決まるとは決して思いません。心が自由にあるための(OriHimeのような)乗り物があれば、人はまだまだ生きる楽しみを見つけられると信じています」などと語りました。
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