代表理事挨拶
哲学は価値の提案の学です。提案する相手は、何よりも人々であり社会です。人々にその声を届けるためにも、哲学はいま再び、社会に向き合い、社会にエンゲージしなければなりません。
一方、21世紀の世界は、価値の多元化、多層化をますます必要としています。このような二つの指向性が交わる「場」、哲学と社会を結び、両者の対話の中から新たな人間観、世界観を生み出し、それを世界に発信する「場」として京都哲学研究所は設立されました。
世界の人々や研究者が、ここ京都に集い、議論し交流することで、京都発の新たな価値観と知のトレンドを生み出す。それが「われわれ」のミッションであり、夢でもあるのです。
出口 康夫
京都大学
副プロボスト
文学研究科 副研究科長・教授
人と社会の未来研究院 副研究院長
京都大学大学院文学研究科哲学専修教授。研究分野は、確率論・統計学の哲学、科学的実在論、シミュレーション科学・カオス研究の哲学、カントの数学論、スコーレムの数学思想、分析アジア哲学など多岐にわたる。近年は、「できなさ」に基づいた⼈間観・社会観として“Self-as-We”(われわれとしての⾃⼰)を提唱し、NTTとの共同研究にも従事する。大阪府出身。京都大学大学院文学研究科応用哲学倫理学教育研究センター・センター長や京都大学大学院文学研究科副研究科長なども務める。京都大学文学部卒、同大学院博士課程修了。

京都哲学研究所創設にあたって
2019年夏、京都大学の出口教授を訪ね、新しい情報通信基盤(IOWN)について議論した折、「新しい社会インフラには新しい哲学が必要」と明確な示唆をされた。
2019年12月、中国よりコロナパンデミックが始まり、全世界を覆った。 ヒト、モノの動きが止まり、グローバリズムは変質し、自国ファーストの考えと同調した。
2022年3月、ロシアのウクライナ侵攻。世界は安全保障をまず考える時代となり、 米中のジレンマの中、グローバルサウスの台頭がトリレンマの構造をもたらしたが、 世界の現状が冷戦時代のように東西、そして南北の分断の構造にあることを鑑みれば、 その建設的な解消には、多様な価値を認め合う4番目の原理(テトラレンマ)が必要である。
西洋の価値と東洋の価値を共存させる、まさに今新しい哲学が求められている。 新しい世界価値を京都から提案し、未来への希望を作っていきたい。
まさにその第一歩が、京都哲学研究所の創設なのである。
澤田 純
日本電信電話株式会社(設立時社員)
代表取締役会長
日本電信電話株式会社代表取締役社長を経て、同社代表取締役会長。同社社長在任中には、次世代情報通信基盤「IOWN(アイオン)」構想の発表、NTTの組織再編、国内外の提携推進など大胆な改革を進める。哲学に造詣が深いことでも知られ、著書『パラコンシステントワールド』では、哲学・生命科学・情報科学の観点からパラコンシステントという未来のビジョンを提示。健康長寿産業連合会会長、日米経済協議会会長、日本経済団体連合会副会長なども務める。大阪府出身。京都大学工学部土木工学科卒。

設立趣旨
国内外の企業の中長期的活動指針となりうる、日本発の世界価値基準を提案し、価値多層社会における持続可能性の考え方となる新たな社会価値・秩序を形成する。
- 日本・アジアの思想と欧米思想の双方の価値を両立させる新しい価値形成・価値戦略の検討・展開を図り、国内外の産業界、ひいては社会全体を巻き込んだ運動論の形成を行う。
- 現代社会の諸問題に取り組むため、哲学を中心とした人文学の研究を遂行し、日本・東アジアの価値観を、西洋思想と対話可能なオルタナティブ(同位思想)として哲学的に体系化する。
- 上記思想の社会提案・実装に取り組み、西洋的価値観と非西洋的価値観が矛盾許容的に共存する価値多層社会の実現を目指すとともに、社会への積極的関与を志向するエンゲージング(積極関与)人文学(Engaging Humanities)の再興を図る。
- 以上の活動を、世界有数の歴史と伝統を持つ都市・京都を中心に展開することで、国際的に訴求力をもった運動体を形成する。
活動内容
(1)研究プロジェクト:世界価値戦略のための言説空間の構築
国内外の研究者が参画する哲学研究プロジェクトを一定期間実施し、多言語の学術書・学術論文・一般入門書・メディアコンテンツ等からなる言説空間を創出することで、「京都会議」を中心とした世界価値戦略に対する座標軸を与える。
(2)セクター横断的な共同事業および社会発信による哲学の社会実装
人文系研究者と産官学民人材、科学技術者、アーチスト・デザイナーとの対話・共同研究・共同事業を実施し、その内容をマルチメディアコンテンツ化し価値観の社会実装を図る。
(3)「京都会議」の開催
世界を代表する人材が一堂に会し、世界経済や環境問題などについて討議する「京都会議」を定期的に開催することで、新たな世界価値基準の戦略的展開を行う。
団体概要
名称
一般社団法人 京都哲学研究所(Kyoto Institute of Philosophy)
設立時社員
- 日本電信電話株式会社
- 出口康夫(京都大学文学研究科・哲学専修教授/副研究科長、副プロボスト)
代表理事
- 出口康夫(京都大学文学研究科・哲学専修教授/副研究科長、副プロボスト)
Executive Advisor/Chief Strategist
- 野村将揮(京都大学産学連携本部連携研究員、ハーバード大学ケネディ行政大学院、元経済産業省)
住所・連絡先
〒601-8445 京都府京都市南区西九条菅田町19番1号
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