【京都会議ハイライト10】産学対話の新機軸に称賛の声 高まる第2回への期待 ――総括・閉会セッション
二つの基調講演、ランチセッションを含む九つのパネルディスカッション、参加者が丸テーブルを囲んで分け隔てなく意見交換するラウンドテーブル――。2日間にわたって様々なセッションを用意し、産業界と学術界がひざ詰めで対話する実験的な場ともなった第1回京都会議。参加者の皆さんの記憶には、どのように刻まれたのでしょうか。締めくくりとなるパネルディスカッション⑥では、それぞれのセッションで進行役を務めた識者5人が議論を総括し、そこから得た成果について論評するとともに、第2回京都会議への期待を語りました。
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「ABCモデルに『D』追加を」「生命、教育もテーマに」 参加者から活発提案
「大胆なビジョンを打ち出し、人々を集め、互いの話に耳を傾けることができる空間を作り出してくれました。これが、いかに貴重なことでしょうか」
パネル④のモデレーターだったマサチューセッツ工科大学(MIT。米国)のヴィープケ・デーネーケ教授はそう語り、第1回京都会議の「価値」の一つは、産業界と学術界だけでなく芸術界や宗教界、教育界、官界などの関係者が垣根を越えて語り合ったことにあると指摘しました。京都哲学研究所が提示したABCモデルについても高く評価し、対話(Dialogue)や外交(Diplomacy)の要素も重要だとして、ABCに「D」を付け加えてはどうかと述べました。
パネル①の議論を牽引した東京大学の納富信留教授は、領域横断の議論で改めて見つめ直さなければならないと実感した命題を明かしました。
「科学技術は、ある種の歴史的・文化的な哲学に基づいています。それは純粋に中立的なのか、普遍的なのか。これは、私たちが再び考慮しなければならない問いです」
そのうえで、納富教授は今回の会議で主要なトピックになったAIだけでなく、第2回目以降は生命、病気、教育などの個別テーマも取り上げていくべきではないかと建設的な提案を行いました。
一方、パネル②のモデレーターを務めたハーバード大学(米国)の哲学者マティアス・リッセ教授は、人類の歴史をマクロレベルで見ると今は重要な「転換点」に置かれていると指摘。気候変動や貧困など世界が直面する喫緊の課題を例示し、人類はこれらに対処する「十分な知識、十分な資源、十分な能力」をまだ持ち得ているからこそ、連帯して迅速に取り組むことが必要だと主張しました。
一元論、二元論にはくみせず 多様性あふれる取り組みに
これで全てのパネルディスカッションが終了しました。2日間の議論を振り返る閉会セッションでは、京都大学の出口康夫教授、NTTの澤田純会長の当研究所共同代表理事2人と、当研究所のシニア・グローバル・アドバイザーでボン大学(ドイツ)のマルクス・ガブリエル教授の3人が参加者からの質問に答えました。
会場から出た質問の一つは「西洋と東洋」など万事を対立するものとしてとらえる二元的考え方や、他者との違いを認めない一元的な考え方について、京都哲学研究所の見解を問うものでした。これに対する3人の答えです。
ガブリエル教授「日本は西洋にあるのでしょうか。それとも東洋にあるのでしょうか。日本は、この区分がいかに役に立たない概念であるかを示す素晴らしい例です」
澤田会長「産業界は矛盾を抱えていて、それをどうトレードオフするかという西洋的な判断を入れています。しかし、現実的にはそれだけでは足りない状況になってきています。(京都会議で行われた)こういう議論を産業界にも適用できるのかというのが、次のチャレンジにもなると理解しています」
出口教授「WEターンも実は日本語と英語を行ったり来たりで作られているものですので、どこまでが日本語で、どこまでが英語かも、作っている本人(出口教授)がわからない。結局、運動で乗り越えるしかない。(問題の根本原因へ思考を深める「潜行」と、新たな価値から未来を構想する「浮上」の両方を繰り返す往還運動の)その中に入って、乗り越えるしかないと私は考えております」
当研究所と政治との距離感を尋ねる質問もありました。澤田会長は「今回は中東の方、中国の方、ロシアの方にお声かけしておりません。こういう場を作るにあたって、まずABCモデルや価値多層社会を議論できるかというところから入っています」と説明し、段階を踏んで参加者の幅を広げていく意向を表明。これに関連して澤田会長は、対話型AIサービスChatGPTの開発で名をはせたオープンAI(米国)のサム・アルトマン最高経営責任者らとの対話もあり得るかとの質問を閉幕後の記者会見で受け、「入れていくことになると思います」と肯定したうえで、こう述べました。
「ただ、全部がパワーゲームに行っちゃうと結構、ホモジニアス(均質)な世界に、一元主義的な世界に行ってしまいます。量より質を重視したり、多様性を重視したりする構造っていうのが多分、健康なんじゃないかと思っていまして、この京都会議はそういうことをベースに(思考や経営を)している方々が来ているという認識です」
我々は対話する、ゆえに我々は・・・第2回京都会議27年夏開催へ
閉会セッションの終わり際に、参加者が第1回会議の「標語」を提案する一幕がありました。近代哲学の祖ルネ・デカルトの第1原理「我思う、ゆえに我あり」(I think, therefore I am.)から着想を得たものだそうです。
「この会の標語としては『We are dialoguing, therefore we are becoming network.』ではないかと思います。出口先生、(コメントを)お願いします」
我々は対話する、ゆえに我々はネットワークになる――。頷きながら聞いていた出口教授が、破顔一笑して答えます。
「今おっしゃったそれを、私としてはこの会議のコンクルージョンとさせていただきたい。コピーライト(著作権)、いただきます」
会場がどっと沸く中、最後に澤田会長が2年後に向けた抱負を語り、第1回京都会議は幕を閉じました。
「非常に活発なコミュニケーションができて、ありがたかったと思います。第2回京都会議を2年後に考えており、次回は是非、世に発表できるような、ここ京都からの宣言を作れるように努力をしていきたいと考えています。ありがとうございました」
当研究所は「価値多層社会」実現へのモメンタムを加速させるため、2027年夏の第2回京都会議開催と「京都宣言」の発出に向けて準備を進めます。
(おわり)
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