出口教授ら公開講演会。「価値多層社会」「普遍性」など議論。京都哲学会と共催

京都哲学研究所の共同代表理事を務める京都大学の出口康夫教授と、当研究所のシニア・グローバル・アドバイザーでもある独ボン大学のマルクス・ガブリエル教授が11月2日、京都市で開かれた公開講演会に出席しました。

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京都哲学研究所の共同代表理事を務める京都大学の出口康夫教授が11月2日、京都市中京区の京都烏丸コンベンションホールで開かれた公開講演会に出席しました。出口教授が代表を務める京都哲学会と当研究所による共催イベントで、一般聴衆を含む約90人が参加しました。

講演会では出口教授のほか、来年9月開催予定の「京都会議」に参加する東京大学の中島隆博教授、当研究所のシニア・グローバル・アドバイザーでもある独ボン大学のマルクス・ガブリエル教授がそれぞれ講演し、3氏に対する質疑応答や意見交換も行われました。

出口教授の講演テーマは持論の「WEターン」。WEターンは、一人では何もできないという「根源的なできなさ」を認識し、自分は常に「我々(WE)」の一員であるとの視点に立ち返って(ターンして)思考することを言います。出口教授は講演で「できなさにこそ人間の本質、尊厳、かけがえのなさがある」と着眼点の重要性を改めて強調しました。そのうえで、動植物など人間以外の生命体に加え、AIやロボットを含む人工物についても「人間の一方的な利益に奉仕する『奉仕=被奉仕』の関係ではなく、もっと平等な関係を設定すべきだ」と語り、対等な仲間に位置付ける「フェローシップ・モデル」を提唱しました。

一方、中島教授は講演で、人間と平等に動物やAIにも「正当な理由なくして捨てられない権利」(反ディスポーザル権)を与えた場合、たとえば人間は動物を食べることができなくなるのではないかと指摘するなど「WEターン」に批判的な考察を加えました。当研究所が掲げる「価値多層社会」については「文化相対主義に陥るのではなく、価値を普遍化していくプロセスが重要だ」と注文し、その後に行われた出口教授との議論は深まりを見せました。

ガブリエル教授も「普遍性」をテーマに講演し、「現代は『入れ子になった危機』の時代だ。普遍的な倫理こそが、問題の解決策を提示することにつながる」と語りました。

京都哲学会は「広義における哲学の研究とその普及を図る」ことを目的とした学会で、京大文学部思想文化学系を中心とする「旧哲学科」の教員が委員を務めています。

 

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