「価値の世紀」に多様な選択肢を――出口教授、日立京大シンポで講演

京都哲学研究所の共同代表理事を務める出口康夫京大教授が3月19日、京大で開かれた第7回日立京大ラボ・京都大学シンポジウムに登壇し、「“価値の世紀”の行方――価値多層社会に向けて」と題して基調講演を行いました。

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 日立京大ラボは、当研究所の理事会社でもある日立製作所と京大が2016年に設立した共同研究組織で、日立の研究者と京大の教授・学生が「新たな社会イノベーション」を目指して活動を続けています。シンポジウムは同年の初開催後、2020年以降は毎年開催。今回のテーマは「新たな価値の社会実装」でした。日立のほか、それぞれ京大と共同研究を行っている博報堂、NTT、SMBCグループが企業の目線から研究成果や課題感などについて報告し、オンライン視聴を含め258人が耳を傾けました。

 出口教授は企業各社の報告に先立って講演。21世紀は「価値の世紀」だとの見方を示し、アンチテーゼとしての20世紀について「科学技術が発展して理想的な経済システムが構築されていけば、人々は幸せになり、社会がより良くなって戦争はなくなると信じられていた。しかし、現状は真逆だ」と述べました。そのうえで、「価値の世紀」に創設された当研究所の役割について説明し、「価値には多様な選択肢がある。それを言語化してテーブルの上にカードとして並べていくこと」だと強調しました。

 また、「個々人を見ても、一つの会社を見ても、一つの大学を見ても、実は異なった、場合によっては相対立するような価値が混ざり合って、明確な違いを中に抱えつつ存在している。それが我々のアイデンティティの基本的な在り方ではないか」と指摘し、そうした認識を共有していくことが「価値多層社会」への一歩になると述べました。

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