人間は「像」をいかに捉えるか――米NYで哲学的思索 KIP共催セミナーにガブリエル教授と京大院生ら

京都哲学研究所のシニア・グローバル・アドバイザーを務める独ボン大学のマルクス・ガブリエル教授が9月1日から5日にかけて米ニューヨークで開催された集中セミナーに登壇しました。本セミナーは、哲学・新人文学研究所(Institute for Philosophy and the New Humanities)が主催したもので、日米独の大学院生ら約20人が参加し、AI時代における「偶像破壊(イコノクラスム)」というテーマをめぐって活発に議論を交わしました。
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哲学・新人文学研究所は、ウド・ケラー財団(独)からの支援のもと、ニューヨークにあるニュースクール大学の人文社会科学を専門とする部門「ニュースクール・フォー・ソーシャル・リサーチ」内に2020年に設立された研究機関で、哲学と人文学の革新を目指す国際的な学術交流の拠点として注目されています。毎年秋に開催される集中セミナーでは、現代的課題を乗り越えていくために人間はどうすべきか、国内外の大学院生と著名な研究者が5日間にわたって対話と思考を深めます。
6回目となる今回は、「像(アイコン/イメージ)はいかに捉えられるか?」という、哲学(美学)、歴史学、芸術学における古典的な問いを軸に据え、画像生成AIが急速に発達し、フェイクニュースの蔓延やそれに伴う人権侵害が問題になりつつある昨今、人間はいかなる立場から「像」と向き合うべきかを考えるセミナーとなりました。ガブリエル教授を含む哲学・新人文学研究所の共同ディレクターによるワークショップやプレゼンテーションのほか、独ボン大学のビルギット・メースマン教授(美術史)、米ニューヨーク市立大学のエリン・トンプソン教授(美術犯罪)ら専門家が基調講演に登壇し、それぞれの専門分野から深い洞察が提示されました。また、心の哲学と認知科学で国際的に著名な米ニューヨーク大学のネッド・ブロック教授、米カリフォルニア大学バークレー校のアルヴァ・ノエ教授も基調講演を行いました。
参加者約20人のうち日本人は京都大学の大学院生3人で、当研究所の辻麻衣子研究員が引率しました。刺激的なセッションが連日展開され、ニュースクール大やボン大の大学院生らとの対話もセミナーの大きな成果となりました。
また、今年は当研究所もこの集中セミナーの共催に加わりました。9月下旬には舞台を京都に移し、第1回京都会議の開催に合わせて、さらに5日間のセミナーを予定しています。京都セミナーでは、第1回京都会議に登壇予定のL. A. ポール教授(米イェール大学)が基調講演を行う予定です。国際的な知的交流の新たな場として、引き続き実りある議論が期待されます。
※本記事の写真は陳洵渼(京都大学)撮影
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