ポルトガルの学術機関と連携 ネットワーク形成へ基盤構築 出口、ガブリエル教授ら3都市訪問

 京都哲学研究所の共同代表理事を務める出口康夫京都大学教授とシニア・グローバル・アドバイザーを務めるマルクス・ガブリエル独ボン大学教授が、11月21日から27日にかけてポルトガルの3都市を訪問しました。ポルトガルの主要な学術機関との間で重要な連携基盤を構築することができました。この関係を強化・発展させていくため、来年以降、新たな共同研究プロジェクトの立ち上げを検討しています。

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 ガブリエル教授は現在、カルースト・グルベンキアン財団の研究助成を受け、ポルトガル第二の都市ポルトのポルト大学で5か月間にわたり文学部客員教授の職に就いています。この機会を活かして出口教授と共にポルトガル各地の研究機関を歴訪することにより、国際的な哲学研究ネットワークの拡大を目指すことにしました。

 24日には、ポルト大学の文学部と哲学研究所、そして当研究所などが共催し、「変容する社会におけるAIと価値」と題したワークショップを開催しました。約60人が参加した本イベントでは、辻麻衣子研究員による当研究所の紹介に続き、出口教授が「価値のWEターン」と題した基調講演を行いました。

 午後のセッションでは、ポルト大学やコインブラ大学の研究者が登壇し、AIシステムの認識論的性質、AI時代における感情と価値、社会分析の解釈学的アプローチなど、多様なテーマについて活発に議論しました。

 また、ガブリエル教授が「AIシステムは社会関係をどのような意味で理解できるか―LLM(大規模言語モデル)革命後の社会的解釈学と社会存在論」と題した基調講演を行い、最後に出口教授、ガブリエル教授に加え、ポルト大学理学部のアリピオ・ジョルジ教授、哲学研究所所長のジョゼ・メイリニョス教授による「AIと現代社会の変容」をテーマとしたラウンドテーブルで締めくくられました。

 翌25日には、ヨーロッパ最古の大学の一つであるコインブラ大学(1290年創立)の文学部で、「社会的解釈学と社会存在論」をテーマとしたワークショップを開催しました。コインブラ大学古典・人文学研究センター、ポルト大学哲学研究所MLAGリサーチグループ、当研究所の共催によるものです。

 約30人の参加者を迎え、辻研究員が当研究所の取り組みなどについて紹介した後、出口教授が基調講演を行いました。続いてポルト大学、シャルジャ・アメリカン大学(UAE)、コインブラ大学の研究者がパネルディスカッション。最後にガブリエル教授がもう一つの基調講演を行いました。また、ワークショップに先立ち、「世界一美しい図書館」と称されるジョアニナ図書館の見学ツアーにも参加しました。

 26日には、リスボンのルゾフォナ大学で、「AIとテクノロジーのメガトレンド」と題した出口教授とガブリエル教授によるトークイベントが開催されました。ルゾフォナ大学はポルトガル最大の私立大学で、ポルトガル語圏の産業・文化政策分野にも広くネットワークを持つ研究教育機関です。ジョゼ・ブラガンサ・デ・ミランダ学長の招待により、コミュニケーション・建築・芸術・情報技術学部と応用コミュニケーション・文化・新技術研究センターの共催で実施されました。出口教授とガブリエル教授は約20人の参加者とともに、AI倫理と社会変容をめぐる「WEターン」と新実在論の視点から議論を深めました。

 

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