万博「テーマウィーク」で対談 澤田NTT会長と福岡教授 生命やAIめぐり

 京都哲学研究所(KIP)の共同代表理事を務める澤田純NTT会長と、「KIPアンバサダー」として当研究所の理念普及に一役買っている生物学者の福岡伸一青山学院大学教授が4月28日、大阪・関西万博の会場で特別対談を行いました。万博期間中に設定された「未来への文化共創ウィーク」(4月25日~5月6日)の公式イベントで、2人は約100人の聴衆を前に「万博で作り出したい新しい文化」などについて約1時間にわたり語り合いました。

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 京都大学卒で、哲学者・西田幾多郎への造詣が深く、万博にも強い思い入れを持つなど共通点が多い澤田会長と福岡教授。少年時代に1970年開催の大阪万博を訪れ「ワクワクした」と話す福岡教授は、今回の万博で「よりよい社会と地球の未来に向けて、いのちを捉えなおすためのフィロソフィーを手渡したい」との思いから、パビリオン「いのち動的平衡館」をプロデュースしたといいます。

 2人はこの日の対談でも、生命や科学技術、そして万博の永遠のテーマである人類の未来について意見を交わしました。福岡教授は「ITと生命の関係はどうあるべきか。それはITだけが決められることではなく、人文知から来るメタ視点が羅針盤になる」と述べ、当研究所の設立趣意に賛同する考えを改めて表明。澤田会長は福岡教授が説明した「利他性の生命論」に共感を示し、「生物や自然の動きは利己でありながら利他である、そういう概念を入れてくるような多元論。(つまり)出口康夫京大教授の言う『価値多層社会』の考え方が必要なのではないかと(思って研究所を設立した)」と応じました。

 大阪・関西万博ではNTTも企業パビリオンを出展し、次世代情報通信基盤「IOWN」(アイオン)による空間伝送技術で再現したPerfumeのライブパフォーマンスが人気を呼んでいます。対談の話題はNTTが手掛けてきたコミュニケーション手段の発達や、世界を席巻するAIの在り方にも及びました。

 澤田会長は「AI自身がAIを規制したりコントロールしたりしてAI同士が繋がり合う『AIのインターネット』のようなものを構想しないと、AIはうまくいかないのではないか」と指摘。福岡教授は「二つのAIだと対立構造になってしまうので、補完する別のAIが要る。3体以上(のAI)で相互に規制し合いながら助けていく利他的なモデルがあればいい」と語り、会場に集まった企業関係者らは深く聞き入っていました。

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