「倫理資本主義で社会課題解決を」 ガブリエル教授、最先端技術の国際会議で講演 ドイツ南西部・ハイルブロン

京都哲学研究所のシニア・グローバル・アドバイザーを務めるマルクス・ガブリエル独ボン大学教授が5月25日、独南西部ハイルブロンで開催された最先端技術に関する国際会議で講演しました。ガブリエル教授は持論の倫理資本主義について語ったほか、当研究所の取り組みに触れ、その意義も強調しました。
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ガブリエル教授が講演したのは独経済紙ハンデルスブラットが今年初めて主催した国際会議「TECH」で、AI、サイバーセキュリティ―、デジタルイノベーションなどをテーマに3日間にわたり開催されました。独シュレーダー政権で副首相兼外相を務めたヨシュカ・フィッシャー氏、フィリピンのジャーナリストでノーベル平和賞を受賞したマリア・レッサ氏、台湾のIT担当閣僚としてデジタル民主主義の浸透に取り組んだ実績を持つオードリー・タン氏など著名人も登壇しました。主催者によると、期間中は欧州の企業関係者を中心に延べ約1400人が会場を訪れたということです。当研究所の理事会社であるNTT、読売新聞の関係者らも現地で聴講しました。
ガブリエル教授は会議初日のメインゲストとして、司会者との対談形式で講演しました。ガブリエル教授は、俯瞰すれば、人類は倫理や多様性を社会制度の中に取り込んでいく「道徳的進歩」の道を着実に歩んでいるとの見方を示し、「人間は現在直面するすべての課題を解決する能力がある」と述べて、悲観主義を戒めました。ビジネスに倫理的な考え方を融合させた倫理資本主義が社会課題解決の有効策になるとし、急速に発展するAIの開発においても道徳的価値を大切にすべきだと主張しました。これを自ら実践するため、倫理的なAIの構築に挑戦しているとも語りました。
講演を締めくくる最後の質問は「人間と機械との関係性はどうあるべきか」でした。司会者から見解を問われたガブリエル教授は「それについては日本の友人から学んだ」と当研究所の共同代表理事を務める出口康夫京都大学教授の名前に言及。AIやロボットを含む人工物を対等な仲間に位置付ける出口教授の「フェローシップ・モデル」や、一人だと何もできないという根源的なできなさを認識し自分は常に「われわれ」(WE)の一員であるとの視点に立ち返って思考する「WEターン」の考え方についても説明しました。
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