倫理学の有力誌に論文掲載 KIP研究員のモーティマー博士 「道徳的責任」めぐり考察

京都哲学研究所の研究員で、英オックスフォード大学インテーザ・サンパオロ・リサーチフェローと京都大学経営管理大学院特定講師も務めるサミュエル・モーティマー博士の論文「床を掃除するか、人を月に送るか:集団行動に対する個人の道徳的責任の自己物語と範囲」(原題:“Mopping the Floors or Putting a Man on the Moon? Self-Narrative and the Scope of Individual Moral Responsibility for Collective Actions”)が、倫理学分野で最も権威のある学術誌の一つ『Philosophy & Public Affairs』に掲載されました。
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ニュース・記事内容
モーティマー博士はこの論文で、法学や哲学において広く信じられている考え方に異議を唱えています。その考え方とは、人々が自身の所属するグループ(たとえば企業や政府)の行動に対して負う道徳的責任は、そのグループに対する因果的影響の程度に依存するというものです。代わりにモーティマー博士は、人々の道徳的責任は自分自身のナラティブに依存することを示しています。ナラティブは集団行動を調整する上で重要な役割を果たしており、また個人の経験や意図に深く広範囲にわたって影響を与えています。
集団行動に対する個人の道徳的責任についてのモーティマー博士の考察は、人々の道徳的責任がグループ内での権力レベル、因果的影響、階層的地位とは独立して変化する可能性があることを示しています。この指摘は、当研究所共同代表理事を務める出口教授が提唱するSelf-as-Weに照らすと、さらなる帰結をもつこととなります。出口教授はあらゆる行為がその本質において共同行為であることを指摘していますが、そうであれば、モーティマー博士が主張する、ナラティブが道徳的責任において果たす重要な役割は、あらゆる行為へと拡張されることとなるためです。
この論文はこちらのリンクから読むことができます。
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