スイス政府系財団と連携へ KIP教授陣、WSに招待参加 科学と哲学の垣根越え

ジュネーブ・サイエンス・ディプロマシー・アンティシペーター財団(Geneva Science and Diplomacy Anticipator= GESDA)が主催するワークショップに、京都哲学研究所の共同代表理事を務める出口康夫京都大学教授とシニア・グローバル・アドバイザーを務めるマルクス・ガブリエル独ボン大学教授が招待され、3月24日から3月28日にかけてスイスを訪問しました。
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GESDAはスイス連邦政府とジュネーブ州・市によって2019年に設立された独立財団で、科学の進展を先取りし、社会的課題の解決に結びつけることを目指しています。その中心的取り組みは「GESDAサイエンス・ブレークスルー・レーダー(GESDA Science Breakthrough Radar®)」で、今後5年、10年、25年の間に社会に大きな影響を与える可能性のある科学技術の進展を展望するものとなっています。GESDAはサイエンス・ブレークスルー・レーダーを世界各国の政策立案者や市民と共有することにより、科学と外交の橋渡しを行っています。
今年で3回目を迎えた「ヴィラール・アンティシペーション・ワークショップ(Villar Anticipation Workshop)」は、スイス南西部、レマン湖近くに位置するアルプス山中のリゾート地、ヴィラール=シュル=オロンのホテルで3月24日から3日間開催されました。テーマは「惑星化された人類(Planetarised Humanity)」。グローバル化、デジタル技術、AIなどの急速な発展が進む現代において、目先の課題や技術的解決にとらわれず、自己と他者、人間と非人間の共存はいかにして可能か、という根源的な問いに焦点が当てられました。
哲学や人類学、経済学、公共政策論、AI開発など多様な分野の研究者30名が世界各国から集い、専門の垣根を越えて直接対話を重ねるなかで、先端科学の知見を社会に受け入れるための新たな人間観を模索しました。出口教授とガブリエル教授は、ワークショップ最終日の26日、全体を締めくくる最終セッションに登壇し、「私たち人間とは」「私たちは社会としてどのように共に生きることができるのか」「地球の持続可能な未来をどのように確保できるか」といった、GESDAが掲げる根本的な問いをめぐって議論を交わしました。
ワークショップの合間には、深い雪が残る山頂近くのシャレー(山小屋)で参加者がスイスのチーズ料理「ラクレット」を楽しみ、スノーシューイング体験でアルプスの絶景を堪能するなど、和やかで親密な雰囲気に包まれた会合となりました。
また、出口教授とガブリエル教授は26日、GESDAの理事兼理事会事務局長を務めるステファン・デクテール氏、GESDA学術フォーラム議長を務めるミハエル・ヘンガートナー教授(スイス連邦工科大学理事長)らと会談し、当研究所とGESDAの連携・協力を深化させていく考えで一致しました。
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