AI時代の学問とは。出口教授が物理学者の橋本幸士・京大教授と対談
京都哲学研究所(KIP)の共同代表理事を務める京都大学の出口康夫教授と、京都大大学院理学研究科の橋本幸士教授による対談イベントが8月20日、東京・赤坂の博報堂本社内にある「UNIVERSITY of CREATIVITY (UoC)」で開かれました。哲学と物理学という文系と理系の枠組みを超えて、AIの活用が進む中での学問のあるべき姿や展望について約90分間議論を交わしました。
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イベントは、「真善美とクリエイティビティ~感動を知の檻から解き放とう AI時代、学問はどこへ向かう!?」とのテーマで行われ、UoC局長の高橋徹氏(京都哲学研究所シニアコミュニケーションズマネージャー)が司会を務めました。
出口教授は、世界を創造した「神」を表す「クリエイター」という言葉が、今のように人間に対して使われるようになったのは、ドイツの哲学者カントが学問や芸術の天才を指して使ったのが出発点だったという話を紹介しました。これによって、世界を創造する神の行為を意味していた「クリエイティビティ」という言葉も、神によって創られた人間である天才たちが行う活動を指すようになったと説明しました。このように学問の世界では、従来の観念を覆す考え方や、初めは「横紙破り」と思われるような主張が、新たに生まれてパラダイムを作るということが繰り返されてきたと指摘したうえで、「今AIが出てきて、何か大きく変わるパラダイムシフトが起こるかもしれない」と語りました。
さらに、生成AIによって大量の論文が作成される状況になり、人の手による論文の査読システムが成り立たなくなりつつあることを例示して、「今の学問のシステムがもしかしたら溶けてなくなるかもしれない」との見方を示しました。そして、「ここから創造的破壊が出てくるのか、単なる破壊で終わるのか。我々は創造的破壊にしようと動いています」と話し、学問における「横紙破り」や「ちゃぶ台返し」を再び起こす一つのチャンスではないかと投げかけました。
また、生成AIの能力向上に伴い、AIが作成した文章のレベルが飛躍的に高まっているとの認識を示しつつ、自らの考え方の核心となる部分は「体験」「人生」「記憶」に基づいていると説明しました。こうした「文書化・言語化していないもの」を基に一から思想を生み出すことができるのは、言語化されたデータが必要なAIと人間の大きな違いではないかと指摘しました。
橋本教授は、「真善美」という考え方について、AIによる科学的な「真」を追究する動きが進むことで、「人間にとって美しいと思われないような様々な科学理論が勝手に発見されて、世の中に出てくる。科学は美をもって真を追究するところなのに、美が必要なくなってしまうと、学問が全然違うものになるかもしれない」との見方を示しました。AIの使い方については、「AIは助けてくれることも多いと思いますが、一方で勝手な定量化によって他のものを見えなくする力も大きい」と指摘しました。そして、「人間とAIが学問をやるうえで、ちゃんと分業して、何に対してそれ(AI)を使うのか」を考えることの重要性を訴えました。
また、京都大学では、専門分野を超えてAI時代の学問の価値を考える研究拠点を作る動きがあり、出口、橋本両教授も参加していることが紹介されました。橋本教授は、AIの普及に対応するため、従来あまり多くなかった学部間の交流が自然に生まれるようになっており、このような拠点の構築は「必然でもあると思う」と話しました。両教授は、「次世代の科学と学問の創出」への期待を寄せて、対談を締めくくりました。
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