異分野の参加者同士で「WE ターン」議論 メキシコで国際シンポジウムを開催

 京都哲学研究所(KIP)は9月14日、メキシコシティのメキシコ国立自治大学(UNAM)で、同大学の哲学大学院プログラムとの共催による国際シンポジウムを開催しました。当研究所共同代表理事の出口康夫・京都大学教授と、シニア・グローバル・アドバイザーのマルクス・ガブリエル独ボン大学教授が講演を行い、学術、ビジネス、教育、芸術など異なる分野の参加者が、価値やAI時代の社会のあり方について語り合いました。

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 今回のシンポジウムは、ラテンアメリカの研究者や様々な分野の実践者との対話を深める機会として企画されました。UNAMの教員や、哲学を専攻する大学院生を中心に50人以上が参加しました。開会にあたっては、本清耕造・駐メキシコ大使が挨拶を述べました。⁠

 まず、出口教授とガブリエル教授がそれぞれ講演しました。出口教授は、自身が提唱する「WEターン」について語り、人間が避けられない終わりへ向かって運ばれていく「存在のベルトコンベヤー」というイメージを示し、実存をWEの視点から捉え直しました。そこでは、ベルトコンベヤーも「『私のベルトコンベヤー』ではなく『私たちのベルトコンベヤー』」であり、「『私が存在する』のではなく、『私たちが存在する』のである」と語りました。

 スペイン語で講演を行ったガブリエル教授は、科学的世界観の限界を論じ、「形而上学を科学に外注することはできない」と語りました。そのうえで、「存在するとは、意味の場に現れることである」という自身の「意味の場の存在論」に基づき、実在は一つの全体にまとめられず、多様なあり方をもつと述べました。

 昼食を挟んで行われた午後の部では、当研究所の活動紹介に続いて、二つのテーマで討論を行いました。第1セッションは「個人の選択から共同の責任へ――公共生活、制度、そしてWEターン」、第2セッションは「AIとともに生きる――技術、文化、そして人間の経験の未来」を取り上げました。

 討論では、第1回京都会議でも実施したラウンドテーブル形式を採用しました。UNAMを中心とする学術界に加え、ビジネス界、初等中等教育、文化芸術など、異なる分野のスピーカーによる対話を起点に、参加者がグループに分かれて議論し、その内容を全体で共有しました。登壇者の話を聴くだけでなく、参加者全員がそれぞれの経験や専門性を持ち寄り、互いの意見に耳を傾けながら考えを深める貴重な機会となりました。

 この形式は、多くのメキシコの参加者にとって初めての体験となったようでしたが、同じテーブルを囲む親密な雰囲気の中で、立場や分野の違いを越えた率直なやり取りが生まれました。終了後には、異なる分野の人々と直接意見を交わせたこと、またそうした対話を通じて、自身の研究や実践にも生かせる新たな視点が得られたことを評価する声が寄せられました。

 今回のシンポジウムは、当研究所が目指す、分野や立場を越えて哲学的な問いを共に考えるということを体現する場となりました。終始和やかな雰囲気の中で率直な意見が交わされ、互いの視点への理解を深め、今後の交流につながる一日となりました。

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